旅日記 「奥まで細道2」

さて、今を去る事十余年前、小生が近藤房之助のディーペスト・ポケットというバンドに
居た折、房之助が刊行していた『蜜柑の山に梨がなる』という雑誌があって、
そこに何か書けをいう事になり、考えの末、ディーペストポケットの旅日記というやつを書く事になった。
「ディーペスト・ポケット」です。「ディー・ペストポケット」じゃないです。きる所を間違えるとえらい事になる。

さて、旅日記なので、かの俳人 松尾芭蕉先生にちなんで、その名も『奥まで細道』!
著者は時々廃人 金澤英明!てな訳で、月日を経た今単なる気まぐれにより旅日記復活
とあいなった次第。その名も!

『奥まで細道 U』



『桜 散 る』 2010.04

 さて、4月2日、4日両日『HARU』木造ホールライブシリーズ

終了いたしました。おかげさまで沢山の音楽ファンにお越しいただき本当に感謝です。

2日の札幌時計台は、北海道大学の前身である、旧札幌農学校演武場で、外観ももちろんだが、

二階のホールは、屋根裏の木の梁まで歴史のしみ込んだアーリーアメリカンの素晴らしい空間で

「あー、今、演奏している側と聴いている人たちが、この空間を確実に共有しているんだなー」なんて

演奏中に感じたりして、こんな事、あまりないですねー。

僕は札幌生まれなので、縁あって時計台で演奏させてもらえたのは、本当に光栄な事です。


4日は、上野旧奏楽堂。言わずと知れた東京芸術大学の前身、東京音楽学校の講堂であります。

溝入敬三が芸大在学中の頃は、まだ学校敷地内にあった、この建物で試験や演奏会をやったそうです。

外には滝廉太郎像もあり、まさに近代日本の音楽の歴史を目撃してきた建物で、しかも原則的に

クラシック音楽の演奏会しか許されない場所での一晩は、なかなか痛快なものがありました。

しかも、この夜は、石井彰が訪れて


「一曲弾かせろ!」とすごまれて、登場する一幕も。

石井は今年1月の北海道で羆に襲われるも命からがら逃げて助かって以来、

態度にすごみが出てむやみに断れません。あーコワ。


 溝入敬三氏、柴田敏弥氏、石若駿ちゃん、石井彰氏

多田鏡子さん、鴨下美穂さん、宮川仁志氏、上西美帆さん、

高松晶子さん。そして、何よりも来てくれた皆さんに心から感謝します。ありがとうございました。



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『奥まで細道 U 北帰行編』 2010.02
―こんな時期にそんな寒いとこ行くか―の巻
2010年1月18日  一面の雪景色の千歳空港に私とピアニスト石井彰は降り立った。

機内で、まぁ毎度の事ながら、スヤスヤと惰眠を貪る石井は、まだこの時点で、これから

起こる恐ろしい出来事を知らない

迎えに来てくれた、いずれは北海道知事になるやも知れぬ逸材、宮川仁志氏の車で一路札幌へ。

札幌に来たからにはまずラーメンでも食おうという事になり出かけるが、石井は雪道に対する備えゼロ!

食後、気のゆるんだところで圧雪状態の路上で案の定スッテンコロリン。腰を強打!

このような極寒の地で気の緩みは致命傷になるやも知れぬと教訓を得る。自然界からは学ぶ事多し。

夕刻より小樽へ向かい市内『グルービー』にてduo Live。

いつ来てもJAZZの雰囲気にあふれた素晴らしい場所。

しかし気になるのは石井の背中に感じるなにやら不吉な影。ん〜、何事もなければよいが。


 19日 昼前に起床。いやがる石井をたたき起こして遅い朝食(昼食?)へ。

北海道に来たからにはやっぱこれでしょう。キリンビール園でうまいビールとジンギスカン。最高っす!

この夜は札幌市内『くう』でライブ。

石井は前日のスッテンコロリンによる影響がでて、湿布を大量購入



 20日 昼前に起床。石井は全く起きる気配なし。

しかたないので朝食(昼食?)に一人でジンギスカンを食す。最高っす!

この日は野幌にある古くからの友、高関勝美の店でライブ。

その名も『ジャズハウス』。こころなしか石井の表情が暗い。気のせいならばよいが。

この日、夜半から雪が本格的に降り始めた。前途に漠然とした不安がよぎる。



 21日 旭川に移動のため早朝9時チェックアウト。

ドラム少年、石若駿と合流するも昨夜よりの雪で渋滞激しく、

しかも、高速道路がなんと吹雪のため途中で通行止め。これでは旭川空港にTOKUを時間までに

迎えに行くこともままならず、しかも、朝から何にも食べていない面々は

次第に表情険しくまさにサバイバル!

一人さびしく空港でわれわれを待つTOKUもかわいそうだが、本心を言うと旭川のジンキスカン屋の

ランチが終わってしまわないかと、そっちのほうが気にかかる。そこでひらめいた!

TOKUにはバスで市内に向かってもらおう。名案なり。やはり人間、ハングリーであるという状況が

良い考えに到達する近道か。

無事ホテルにてTOKUと合流後、な、なんと、目指したジンギスカン屋がやってない。ガビ〜ン!

そこで思い出した。「もう一軒知ってるところがある。駅の並びのレンガの店だ!」もうこうなったら

ほとんど山賊か百姓一揆の集団と化したバンド御一行さん。店になだれ込む。

「いらっしゃいませ、ただいまの時間はティータイムですが。」とネーチャン。

「ジ、ジンギスカン食べたいんすけど。」

「残念ですが5分前に終了いたしました。」

「ゲ〜ッ!と、東京から、わざわざ来たんですけど、何とかなりませんか?」

石井以外、全員目に涙を浮かべてお願いすること約5分。

「そーゆー事でしたら特別に。お二階へどーぞ。」

てなわけで、めでたく本日も朝食(昼食?)ジンギスカンタイムに突入したのである。ヤレヤレ。

おかげさんで夜のLIVE『A・Evans』ドンパチかまして1日も終わり。



 22日 旭川より北上して朝日町というところへ向かう。

車中にて、宮川氏に「メシ食いませんか?」「何がいいですか?」

「何が?てあんた、やっぱアレでしょう。」

「もしかしてやっぱアレですか?」

「そう、アレです。」といったスムーズな会話の後、

宮川氏は運転中にもかかわらずケータイをとると、今から向かう主催者の方に

「すみません、どこかジンギスカン食べられるところないですかね〜?…そうです昼間からです。」

しばしの沈黙の後、「あ〜、ありますか、今日はやってますかねぇ?そうですか、やってますか。」

もはや車中は歓喜の雄叫びの渦!向かったのは、士別市郊外にある『羊と雲の丘』という所の

レストラン『羊飼いの家』。季節が違えば、緑の牧草の広大な丘陵に羊が戯れる天国のような場所

なんだろうが、なにせ、真冬の大吹雪の真っ只中!

思わず、新田次郎の「八甲田山死の彷徨」が脳裏をかすめる。

しかしながら、人間、目的がはっきりしていれば神様は手を差し伸べてくれるものである。

一面白い嵐吹き荒れる中に、一瞬見えた建物一軒。「あれじゃぁないか?」 大正解。

苦労してたどり着いたジンギスカンのうまいこと、人間何事も一心に念ずるべし。

しからば道は必ず拓かれる。又々、大自然より教訓を得たのである。

ジンギスカンのおかげで人間的にひとまわり成長した我々は

朝日町のサンライズホールで大騒ぎの後、夜も更ける。推定気温−15℃。外は雪。



 23日 雪に埋もれた朝日町を出発、北見へと向かう。いよいよ大事件の朝である。

北見への道は途中より一般道。

大雪山系を右に見て、まさに、明治の開拓移民もかくあらん。

車に乗っているくせに何を言うかという気もするが、楽器があるのだからしょうがない。

この日まで4日間連続食べているジンギスカンのエネルギーが、先人の足跡に想いを運んでくれる

と、突然、駿が「すんません、どこかトイレありませんか?」あるわけないでしょうが。

高速道路ならサービスエリアがあるけど、一般道の山越えだよ。「おしっこしたいんすけど」。

まぁ、車の中でされても困ると思った宮川氏は「わかりました。どこかで止めましょう」。

かくして車は雪の降りしきる峠の道路わきに停車。

おしっこしてるところを写メに撮られるのを嫌った駿は、はるかかなたへ雪の中。

カメラ片手に石井も下車。雪の峠道、まさに絶景である。景色に誘われるように石井は山裾へ。

その時石井の背中に、あの『ジョーズ』の音楽が重なる。何かが起きる!




―ところで読者の方々は羆についてご存知か?

羆(ひぐま)は北半球でもっとも獰猛な動物であり、日本では北海道にのみ生息している。

「ナニ?くまは冬眠中だろうって?」そこのあなた。くまは冬眠じゃなくて休眠なんですよ。

冬眠というのはカエルのように仮死状態で土の中で冬を越す事。くまは穴の中で眠っているけど、

起きることは可能なんだそうで。現に明治時代、冬、羆の穴に落ちた警察官が食い殺された事件が

あったらしい。でもその羆を捕まえて札幌の警察署の前にはりつけにして人間食ったらこうなるぞって

見せしめにしたらしい。羆はそんなの見にこないっつーの。

そんなこと考えてたら駿の絶叫で我に帰った。

見ると、石井の後ろに飢えた人食い羆が!!逃げる石井に追う羆!大変だ!

今夜の仕事ピアノレスになっちゃうよ。

「そうだ!」羆は大きな音に弱いかも。

「トク〜ラッパ吹け〜!」あわてたTOKUはラッパ取り出しプス〜!TOKUの場合ラッパといっても

フリューゲルホーンなのでいまいち暴力的な音がしない。

いやいや、トランペットが暴力的だと言っているわけではないのであしからず。

もう、だめかと思ったその時、羆は、さっきまでの勢いはどこへやら、ヘナヘナとへたりこむ。

「今だ、石井逃げろ!」とばかりに皆で涙と鼻水とよだれで見る見る顔が白く凍りつく石井を

車に引きずり込み、その場を去ったのであった。まさに危機一髪!

「しかし、何であの羆、急に腰砕けになったのかね〜?」そこで駿が一言

「あの羆、メスでTOKUさんのファンだったんじゃないっすか?」な〜るほど、それなら納得。

さすが、現役高校生、言う事が違う。さっきまでの恐怖も忘れ、車内は笑いに包まれた。

もちろん石井以外。「え?そんなの嘘だって?じゃあ証拠写真を見てもらいましょうか?」

しかして難を逃れた我々一向は北見に到着。

今夜のライブでお世話になる紺野さんに「北見で、朝食(昼食?)に

ジンギスカン食べれる所ありませんか?」

結局、次の日も隣町の美幌で、地元出身の琴恵ちゃんの案内で朝食(昼食?)に

ジンギスカン食べて、私の場合6日連続朝食ジンギスカンという記録を打ち立てたのであった。

(ギネスに申請考慮中)メェ〜!


後記

:そんな訳で今回の北海道ツアー全行程七日間
(最終日はオフで、皆で網走監獄博物館見学という楽しい時間を過ごしました。)
たくさんの人にお世話になりました。宮川仁志氏、野田さん夫妻、中川幸一氏、「くう」の山本さん夫妻、
飛ヶ谷幸博さん夫妻とご令嬢、森田先生、杉沢先生ご夫妻、駿のパパ、高関勝美氏、アリョーナ、辻村里美さん、
漢さんはじめ朝日町の暖かい人たち、紺野さん夫妻、琴恵ちゃん、羊ちゃん達、
その他にもたくさんの楽しい人達に会うことができました。お礼を言います。本当にありがとうございました。




尚 この「奥まで細道2」は 不定期更新となっております・・・果たして次回はあるのか?ないのか?
               

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